打刻のデータを集計して、8時間を超えた分を残業にする。単純に見える作業ですが、シフト制の職場ではこの計算だけでは足りません。日によって予定の勤務時間が違うと、どこからが法定の時間外かの判断が変わるからです。

結論から言うと、予定と実績を同じ形で持ち、決められた順番で時間を分類することが大切です。

この記事では、1か月単位の変形労働時間制を例に、打刻から残業代を判定するときの考え方を解説します。内容は、月次業務を題材にしたデモを作ったときに整理したものと、一般的な注意点です。実際の運用では、就業規則や労使協定の内容によって扱いが変わるので、社会保険労務士への確認をおすすめします。

法定内の残業と法定時間外を分ける

「予定より長く働いた時間」と「割増賃金が必要な時間」は同じではありません。

区分 内容 割増
法定内残業 予定は超えたが、法定の労働時間の範囲に収まる なし
法定時間外 法定の労働時間を超えた あり

例えば、予定が7時間の日に8時間働いた場合、1時間は法定内残業です。この時間に割増が必要かは、就業規則の決め方によりますが、法律上の割増の対象にはなりません。

変形労働時間制の判定は3段階

1か月単位の変形労働時間制では、ある日に8時間、ある週に40時間を超える予定を組めます。その代わり、時間外の判定は次の順番で行います。

1日、1週、月の総枠の順に時間外を判定し、先の段階で時間外とした時間は後の段階で数えないことを示す図

段階 時間外になる時間
1日 予定が8時間を超える日は予定、それ以外の日は8時間を超えた時間
1週 予定が40時間を超える週は予定、それ以外の週は40時間を超えた時間
月 40時間 × 暦日数 ÷ 7 の総枠を超えた時間

重要なのは、先の段階で時間外とした時間を、後の段階では数えないことです。数え直すと、同じ時間に2回割増を払うことになります。

月の総枠は、30日の月で約171.4時間、31日の月で約177.1時間です。

例で確認する

数字は説明のための例です。

日 予定 実績 判定
A 9時間 10時間 予定の9時間を超えた1時間が時間外
B 7時間 8時間 8時間以内なので、1時間は法定内残業
C 7時間 9時間 8時間までの1時間は法定内、残る1時間は時間外

A の日は、8時間を超えていても、予定の9時間までは時間外になりません。単純に「8時間超」で集計すると、ここで計算がずれます。

割増の率と単価を確認する

法定の割増率の下限は次のとおりです。

区分 割増率
法定時間外 25%以上
法定時間外の月60時間超 50%以上
法定休日 35%以上
深夜(22時〜5時) 25%以上

深夜は、時間外や休日の割増に上乗せします。法定休日の労働は、法定時間外や月60時間の計算には含めません。

また、給与の形によって足す額が変わります。

  • 月給: 予定の勤務の分は月給に含まれるので、予定を超えた時間に、割増を含めた額を足す
  • 時給: 全時間に時給を払うので、割増の上乗せ分だけを足す

同じ計算式を両方に使うと、月給の人の残業代が少なくなったり、時給の人に二重に払ったりする原因になります。

自動化するときの注意点

計算を自動化するときは、次の点も確認します。

  • 打刻の修正を誰が承認するか
  • 打刻がない日、休憩を取れなかった日をどう扱うか
  • 月の途中で週が切れるときの扱いを就業規則で確認したか
  • 給与システムと同じ結果になるかを、過去の月で確かめたか

最後の確認は特に大切です。過去の数か月分を新しい計算と今の給与の両方で計算し、差があれば理由を調べます。

最初の一歩は、1人の1か月を手で分類すること

仕組みを作る前に、残業が多い人の1か月分を表計算ソフトに書き出し、日ごとに分類してみてください。

列 内容
予定 シフトの勤務時間
実績 打刻の勤務時間
法定内 予定超え、法定内
法定時間外 判定の結果

分類に迷った日が、就業規則や運用で確認すべき点です。シフトの条件の整理は、シフト作成を自動化する前に整理したい条件と確認の手順で解説しています。

まとめ

打刻から残業代を判定するには、法定内と法定時間外を分け、1日、1週、月の総枠の順に判定し、先に数えた時間を除きます。月給と時給では足す額が違う点にも注意が必要です。

実際の動きは、デイサービスの月次業務デモで試せます。題材は架空のサンプルで、計算の正確さを保証するものではありません。